なんばグランド花月(-かげつ)は、大阪府大阪市中央区にある、吉本興業が世界に向けて笑いの文化を発信していく活動の本拠地とも言える劇場。略称NGK(エヌジーケー)。1987年(昭和62年)に老朽化したなんば花月に代わる劇場として建設された吉本芸人専用の劇場。 1988年のなんば花月閉館までは併用で興行を行っていた。
吉本新喜劇は、基本的には毎日ここで公演されている。新喜劇や寄席のステージが行われる「なんばグランド花月」と、テレビ番組の収録などに使われる「NGKスタジオ」(一時期「NGKホール」と称していた)が設えてある他、地下一階には吉本笑店街が2004年オープン。また、吉本興業の若手芸人の登竜門となる舞台であるbaseよしもとが向かいに位置する。
平日は2回公演だが、土日祝日は3回公演である。また開始時間の15分前から若手芸人からの前説がある。座席数は約900席で、それ以上は立ち見か補助席(パイプ椅子)による案内となる。
近年は大阪の観光ルートにも入っており、連日ほぼ満席でほとんどが地方からの観光客である。
●吉本新喜劇
[ 創立 ]
1959年3月1日、うめだ花月劇場開場と同時に「吉本ヴァラエティ」として発足。第一号の演目は「アチャコの迷月赤城山」。
毎日放送テレビとのタイアップとして生まれ、創設者の八田竹男(のち吉本興業社長)をして「テレビ時代を睨んだ新たな演芸のビジネスモデル」として、うめだ花月と毎日放送テレビの看板となるべく、まさに社運をかけて育成された。
初期には花菱アチャコや東五九童、大村崑、雷門助六、笑福亭松之助等既存のスターに頼っていたが、やがて研修生を迎え自前のスター発掘を行うようになった。秋山たか志、花紀京、岡八朗、原哲男、平参平、桑原和男等が台頭するようになった。
[ 3チーム制時代の新喜劇 ]
かつては大阪と京都に3つの吉本直営の演芸劇場(大阪に「なんば花月」と「うめだ花月」、京都に「京都花月」)があり、劇団員を3つの組に振り分ける3チーム体制となっていて、それぞれ10日単位(月上旬を上席、中旬を中席、下旬を下席と呼んでいた)で各チームが各劇場に出演し、ひと月で全劇場を回るローテーション制(京都→うめだ→なんばの順で移動する)を繰り返していた。現在活躍中のベテランメンバーは殆どがこの3ヶ所のいずれかで初舞台を踏んでいる。
「うめだ花月」での公演は毎日放送で「花月爆笑劇場」として、また、「なんば花月」での公演は朝日放送で「お笑い花月劇場」として、いずれも土曜日の午後にテレビ放送されていた。
ちなみに、京都花月とうめだ花月は同じ芝居がかかり、なんば花月は両劇場にはかからない新作が上演されていた(例えば、あるチームが上席に京都で掛けた芝居は、引き続いてうめだの中席で同じ芝居を上演されるが、下席のなんばでは別の新作を上演する。このなんばの新作は基本的に京都、うめだでは上演されない)。これは、上記にあるように毎日放送(うめだ花月からの中継)と朝日放送(なんば花月からの中継)がそれぞれ新喜劇を放送していたため、区別するためであると考えられる。
[ 新喜劇人気の下火 ]
1980年代中頃になると、マンザイブーム、室谷信雄、木村進ら主力の離脱などで、新喜劇人気は急速に衰えを見せた。また、吉本の各劇場の老朽化が進んだことで、吉本は1987年にNGKことなんばグランド花月をグランドオープンさせたが、オープン当初は下火となった新喜劇の上演はNGKでは行われなかった。
その頃の吉本新喜劇は、1987年の京都花月閉館、1988年のなんば花月閉館により伝統の3チーム制は失われ本拠地はうめだ花月のみになり、3チーム制も崩壊していた。そして「やめよっカナ!?キャンペーン」での目標動員を達成すると同時にうめだ花月もリニューアルすべく1990年に閉館する(2003年復活)。
存続が決定した吉本新喜劇は、うめだ花月でのやめよッカナキャンペーンの一貫として、心斎橋筋2丁目劇場出身の若手を中心に上演されていたニュー吉本新喜劇が、1989年11月からNGKに拠点を移す事となり、現在に至っている。
現在は、NGKは新喜劇とベテラン芸人(漫才や落語,手品など)中心で、
平日:12時ごろ開始の1日あたり2回公演
金曜:仕事帰りの観客を集めるために夕方を追加した3回
土休日:行楽客を対象として午前10時ごろからの3回公演
対して、うめだ花月は夕方以降に開場し、上演開始当初から仕事帰りの観客を集める時間設定で、出演者は若手・中堅芸人中心となっている。新喜劇の座員は漫才コンビと混じって「芝居もん」に出演することが多いが、「ネタもん」にピンで出演する座員もいる。小籔やなかやまきんに君(キャプテンボンバーとしても)がそうである。
●吉本新喜劇の特徴
[ 演技面の特徴 ]
・各メンバーの固定された「持ちネタ」を利用した予定調和
・メンバー同士の息の合わせに応じたアドリブ(辻本茂雄のローテーショントークなど)。
・ベテラン、重鎮クラスの座員は登場時に一発ギャグを言う(それに合わせて他の座員もこける)
[ ストーリー展開の特徴 ]
・幕が上がった直後は、概ねカップル2組の会話などから芝居が始まることが多い。
・悪状況を打開するために一芝居打つが、必ず失敗する。(例:悪役にマドンナを襲わせて、すかさず主役が助けに入って仲を改善するなど)
・社長や親分は何故か外で待たされている。部下が「社長、社長〜。」と呼んでからわざわざ登場する。
・安尾はこれを逆手にとって「・・・って言うたら誰か来ると思ったでしょ?」とボケる。
・内緒話は漏れなく聞かれている。そのため、内緒話を他の者に漏らして状況をややこしくすることもある。
・大抵は最後のほうで必ずヤクザ、もしくは強盗犯が出て、大暴れする(主に島木譲二のワンマンショー)。座長が場を納めて、エンディングへ持って行くというパターンが多い。
・舞台終盤での感動の場面は必ず誰かがぶちこわしにする。これは茂造じいさんがほとんどである。
・最後は必ずハッピーエンドで締める。以下のパターンが圧倒的に多い。
・主人公(座長)がマドンナに告白するがフラれ、逆にマドンナが別の人物に告白する、もしくは恋人がいる(相手は副座長クラスかたいぞうなどのブサイクキャラが多い)。
・主人公がマドンナの元を去り、マドンナが主人公の名前を大声で叫ぶと「ただいま」とすぐに戻ってくる。
・借金取りに払わずに済んだお金を主人公(茂造じいさん、小籔千豊など)が持ち逃げしようとして見つかる。
・ハッピーエンドの後の最大のオチでエンディングが流れる。出演者がドタバタしている間に緞帳が降りて終演。
[ 設定面での特徴 ]
・基本的に役名=芸名。親子役の場合は子は親の姓になる。
・ただし、辻本茂雄が老人役を演じる場合には「茂造じいさん」、桑原和男が女性(おばあちゃん、おばちゃん)役を演じる場合には「桑原和子」、池乃めだかの場合は「池乃(または、別のメンバーの姓)一郎」となるといったようなケースもある。たいぞうやぢゃいこ、なかやまきんに君などは基本的に本名を名乗る。
・ほとんどの登場人物は知り合い同士。
・基本的にベテランや父母役以外の主要登場人物は20代〜30代前半の年頃の若者という設定。(これを利用して「来年50の癖に」(浅香あき恵)など私生活の暴露を行う事も)
・舞台のロケーションは宿泊施設や、食堂、アパートの一室、オフィスであることが多い。
・宿名、店名、社名、ヤクザの組名などは「花月○○」「吉本○○」「NGK(なんばグランド花月)○○」がほとんど。(花月旅館、吉本財閥、花月組、NGK開発など)
・辻本茂雄の座長公演でうどん屋のロケーションの時は店名が「大勝うどん」となっている事があるが、実はこの店名は辻本の父が阪南市で経営していたうどん屋の名前である。
・就職先は大抵東京だが、関西弁は抜けない。
・殺人など「人が死ぬ、傷つく」は厳禁(ただし事故死、以前からすでに死んでいる、などはある)。傷つくということはあるものの、血を流したりはしない(が、2006年8月19日放送分の『よしもと新喜劇』では、タブー視されているはずの流血シーンが登場した。腹部から血を流していたのは、烏川耕一)。
[ 舞台面の特徴 ]
・ドリフのコントのようなセットチェンジや大掛かりな仕掛けは基本的には行わない。(新春公演など極稀に場を暗転させてメンバーの会話を挟んで行う事も)
・相手を殴る時は効果音が入る。(舞台袖で裏方が薄い板を地面に打ち付けて出している。)
(Wikipediaより)