そもそも馬油とは?
馬油とは、馬の脂肪を長時間煮て不純物をろ過した油で、主にアジアを中心に古来より民間医療薬として使用されてきました。
一般的に、牛、豚の脂肪などの動物性脂肪は飽和脂肪酸で構成されているのですが、馬油はヘットやラードと異なり、不飽和脂肪酸が多く含まれ、動物性脂肪と植物性脂肪の中間の位置に存在しています。不飽和脂肪酸にはリノール酸、オレイン酸、アラキドン酸、リノレン酸などがあり、動物の体内では合成することができませんが、植物はこのような脂肪酸を合成することができ、人間の栄養学的にも重要な栄養素のひとつです。
馬油には、必須脂肪酸である不飽和脂肪酸が多量に含まれています。その代表的なものがリノレン酸であり、これは、抗炎症作用や抗アレルギー作用があることが最近の研究で明らかになってきています。リノレン酸は浸透力が非常に強いのが特徴で、顔や手足、肌につけると、可及的速やかに内部に染み込む性質を持っています。
馬油が肌によいと言われる理由
皮膚を作っている細胞の膜は三層からなっています。内側と外側の膜は蛋白質で構成され、中間の膜は脂肪です。この脂肪が酸化すると細胞の内部への栄養が入らなります。また、細胞内で不要になった物質を細胞外へ排泄できなくなり、この不要物質が顔に多く溜まればシミやソバカスの原因となるのです。
しかし、この中間膜の脂肪が不飽和脂肪酸であれば、細胞は生き生きとしてきますし、皮膚も美しくなります。馬油に多いリノレン酸は飽和脂肪酸(酸化脂肪酸)を不飽和脂肪酸に変える働きがあり、馬油は皮膚内に入り込み、油膜を張って細胞を保護したり、体内に入り込んだ細菌類を油の中に封じ込んで細菌の働きを抑え、細菌の侵入感染やブドウ球菌などの侵入を防ぐ作用があると言われています。
馬の油は変化しにくい
一般的に不飽和脂肪酸は腐りやすい、つまり変化しやすい物質なのですが、馬の油はビタミンEが含まれているので、変化しにくいという特徴があります。また、不純物が少なく、馬の油自体の純度が高ければ高いほど馬油は変化しにくくなり、特有の臭いを発しなくなる性質を持ています。
馬の油は溶けやすい
他の動物の脂肪と異なり、馬の脂肪は不飽和脂肪酸が多いため、脂肪の溶ける温度(融点)が牛などの脂肪より低いという特徴があります。これは植物油が不飽和脂肪酸が多いため、冬の季節でも固まらずに流動的であることと同じです。
馬油について書かれた書物
5〜6世紀の中国で活躍した陶弘景という有名な医者が残した名著「名医別録」という本には、育毛効果があるとの記載があります。また、16世紀には李時珍という医者は「本草網目」という著書で、よりきめ細かい効能を記しており、顔にできるシミやソバカスの除去・防止、手足のひびやあかぎれの治療、日焼けなどによる皮膚の荒れを防止、ケガや虫刺されへの鎮痛などに効果があると記載しています。
近年では、チベット高原に住んでいる動植物から採った薬物について記載されている、中国の青海省にある生物研究所がまとめた「青蔵高原薬物図鑑」という本では、皮膚のかゆみ、水虫、タムシなどへの効能を記しているようです。