ビッセル神戸・2006戦力分析レポート
目標は1年でのJ1復帰。結束力を高め、初のJ2リーグに挑む。
【今季の見どころ】
クラブ史上初のJ2降格という屈辱を味わった昨季を経て、気持ち新たに迎えた今季。新監督には95〜97年にも神戸で指揮をとったスチュアート・バクスター氏を招へい。近年、度重なる監督交代劇など落ち着かないチーム作りを進めてきた神戸が、その反省をもとに『育成・発掘型の組織への変貌』を誓いつつ、『1年でのJ1復帰』を明確な目標に定めてスタートを切った。
この改革に伴い、メンバーも一新。支柱となるMF三浦淳宏、MF遠藤彰弘、MF朴康造、DF北本久仁衛らは残留となったが、チームを離れた主力も多数。そのせいかガラリと雰囲気が変わったようにも見受けられるものの、安達貞至GMの言葉を借りれば「今ここにいるメンバーは全員、神戸のために戦える、1年でJ1に復帰してみせるという強い志を持った選手」。つまり、『組織』ということで考えれば、同じ目標のもとに集まった、例年以上の結束力があるチームということになる。J2リーグは長丁場の戦いになることから、年間通して全く同じメンバーで戦うことは難しいだけに、この結束力が窮地に立たされた時こそ、大きな意味を持つことになるはずだ。
その先頭に立ってチームを引っ張るのは、昨年もチームメイトから絶大なる信頼を集めたMF三浦。「昨年味わった悔しさを1日たりとも忘れずにやっていく。必ず1年でJ1に戻る」と話すキャプテンのもと、先に述べたMF遠藤、MF朴、DF北本ら経験豊富な選手たちが中心になり、若いチームを牽引していくことになるだろう。
目指すのは「速くて、パワーのある、組織的なサッカー」とバクスター監督。そのためには「常にゲームの中で主導権を握ることを目指したい。組織としてのゲーム運びというものを、チーム全体が理解しなければいけない」と言葉を続ける。実際、Jクラブ中最も早い始動となった1月9日からここまで約1ヶ月間のトレーニングでは、ことあるごとに動きをを止めて、守備、攻撃への約束事を確認しながら『組織としてのゲーム運び』の意識づけを図るバクスター監督の姿が。今はまだ未完成な部分もあるが、現在行われているグアムキャンプを含め、開幕までの残り1ヶ月の中で監督の意図がしっかりと選手に浸透すれば、状況に左右されない確固たる強さを備えたチームに変貌しつつ、目標に向かって着実に歩みを進めていくことができるだろう。
唯一、心配なのは外国籍選手の動向。2月15日にDFエメルソン・トーメの完全移籍内定が発表されたばかりだが、残る1名枠については未だ交渉中の段階。開幕まで1ヶ月を切った状況を考えれば、1日も早くチームに合流し、戦術理解を深めたいはずだが…。ちなみに、そのDFトーメ選手はイングランドでは『The Wall(壁)』と呼ばれたほどゴール前での圧倒的な強さを誇るDFで、既に15日よりグアムキャンプ中のチームに合流。「自分の経験、能力を最大限に発揮して神戸のJ1昇格に貢献したい」と意欲的にトレーニングに取り組んでおり、帰国後、日本でのメディカルチェックを経て正式契約を結ぶことになる。
ともあれ、全てをリセットし、神戸のために戦える選手だけを揃えてた新シーズン。J2という決して甘くはない舞台の中で、どんな新しい神戸が楽しめるのか。期待に胸ふくらむばかりだ。
【注目の新戦力】
●FW 19 近藤祐介
U-18、U-19、U-20と各年代の日本代表および日本代表候補としても実績を重ねながら、着実に成長を続ける近藤。3年間在籍したF東京では1年目から試合経験を積み、中でも昨季は先発出場5試合を含む11試合に出場。恵まれた体格を武器にみせる突破力、左右両足で蹴れるシュート力をアピールした。
今季は新たな活躍の場を求めて、期限付き移籍で神戸へ加入。「1ゲームでも多く出場することがまずもっての目標。自分が点を取っても取らなくても攻撃に絡めて、それによってチームとして点が取れればいい。とにかくチームの勝利に貢献したい」という決意でスタートを切ったが、グアムキャンプ前の紅白戦等でも唯一コンスタントに得点を重ねるなど存在感をアピール。「FWとはいえ、守備の部分も求められるので結構大変ですね」としながらも「点を取るのはやっぱり気持ちいい」と笑顔を見せた。初めての移籍ということについても全く不安はなく「みんなが話しかけてくれるので、すぐに溶け込めた」とのこと。「コンビネーションの部分については、これからもっとお互いを知る中で充実していくと思う」と自信をのぞかせるなど、昨季、決定力不足に泣いた神戸にとっては心強い存在になりそうだ。
【日本代表へイチオシ】
●DF 4 北本久仁衛
昨季は出場停止の1試合を除く33試合に出場。うち1試合こそ途中交代となったが、その他の32試合には全てフルタイム出場を果たした。年々生え抜き選手が減っていく状況の中、神戸でのシーズンは今季で7年目。もともと空中戦の強さや当たりの強さには定評があったが、ここ最近はそれらの持ち味に、状況判断の鋭さ、戦術眼の深さなどが加わり、目覚ましい成長を遂げている。
また昨季終盤、残留争いの渦中で示した強いメンタリティもチームメイトから信頼を寄せられる理由の1つ。年齢的にも若いチームにあって中堅からベテランの域に達しつつあるが、その自覚が芽生えてきたのもディフェンスリーダーとしての存在感へと繋がっているのかもしれない。過去の代表歴としてはU-18〜U-20日本代表までは候補どまりの印象を受けたが、神戸での活躍を続けU-22日本代表、U-23日本代表に選出されてきた北本。今後もさらに経験を積んでいく中で、着実に日本代表へと繋げていってほしい。
【開幕時の布陣予想】
昨年の3バックから、4バックに変更することはほぼ間違いなし。昨季、個人的には存在感を示したDF北本とJ2での経験があるDF小林久晃がセンターバックでコンビを組み、右サイドバックにはDF石澤典明か横浜FMから加入のDF原信生、左サイドバックはDF坪内秀介か。
流動的なのが、中盤の構成。予想スタメンではMF遠藤彰弘を1枚底においた3ボランチを予測しているが、これが2ボランチになった場合は、MF遠藤とMFホルヴィを2枚にして、右の攻撃的MFに朴康造、左にMF三浦淳宏といった感じか。
2トップは、ここまでの練習などでも好調ぶりをアピールしているFW茂木弘人、FW近藤祐介コンビが一歩リードといった感が強い。ただし現時点で獲得交渉中にある外国籍選手が決まれば、そちらを優先して使うことも十分考えられる。また、キャプテンMF三浦のポジションも、バクスター監督によれば「これから見極めてベストなポジションに置く」とのこと。グアムキャンプの中で、ベストな形を見出すことになるだろう。
GKは、本田征治がケガで離脱中ということもありGK徳重健太を先発に予想した。GK本田が戻れば激しいポジション争いの上で正GK決定となるはず。
ほかにも15日よりチームに合流したDFトーメはもちろん、DF河本裕之、DF丹羽竜平、MF田中英雄、MF小森田友明、MF栗原圭介、FW平瀬智行、FW北野翔らが、今後のアピール次第でポジション争いに絡んでくることだろう。